2026年5月25日月曜日

チューリップ


チューリップの約半数は中央アジア原産。
とても暑い夏と厳しい寒さの冬にも耐えて花を咲かせるので、チューリップが遊牧民にとって力強さの象徴になったのも頷けます。

チューリップという言葉はターバンが語源。
トルコの皇帝がターバンにこの花を挿したことから名づけられたと言われています。
ヨーロッパにいつ伝わったのかは正確な記録がありませんが、17世紀にはすでに非常に人気があったことがわかっています。
イギリスのお屋敷を訪れるといろんな花瓶を見ることができます。
そのいくつかはチューリップを飾るのに特化した花瓶。

こんな風にチューリップを活けました。
白地に青い模様なので東洋風に見えますがオランダなどで作られました。


これなんかも同じ目的。


何の役にも立たない、ただ美しいだけの花を栽培するのは大変な贅沢です。
そこでヨーロッパに入ってくると瞬く間にお金持ちの間でブームが起こりました。

オランダのチューリップバブルは有名な話。
チューリップの取引は球根でされました。
だから、どんな花になるのかをたくさんの画家が絵にしました。

生け花は長持ちしませんが、絵に描くと半永久に楽しめます。
ロンドンのナショナルギャラリーにもオランダの花の絵が楽しめるお部屋があります。
こちらはキャビネット。
色の違う石を切り取ってはめ込み模様にしてあります。
ピエトラデュラという方法。
イタリアで盛んになった工芸です。

工芸や絵画に勝るのは本物の咲き誇ったお花をお庭で楽しむこと。
これからイングリッシュガーデンが最高の季節を迎えます。
是非お出かけください。




2026年5月18日月曜日

大英博物館にある魔法の酒杯



この酒杯、ローマで作られたものなのに、なぜか大英博物館の中でも辺鄙なアングロサクソンの部屋に置いてあります。
名前は 「Lycurgus Cup」
この部屋の一つ手前(ルーム40)にはハリーポッターに出てくるチェスのモデルになったルイス島のチェスセットが展示してあります。
ハリーポッターのお話の中に、炎のゴブレットって出てきますよね。
火は出てこないけれど「Lycurgus Cup」は光を当てると、浅い緑色の本体が真っ赤に変わる不思議な酒杯なのです。

読むよりもこの写真を見るのが早い。
これ、携帯のカメラなので、肉眼だともっときれいです。

いかがですか?
展示ケースの光が変化するだけでこんなになるんです。

男の人がぶどうの蔓に絡まれて、それをなぎ倒そうと、もがいているような模様です。
この部分はガラス製。
そしてカップの縁や足元は金をかぶせた銀でできています。

どうして色が変わるのかは、ガラスに秘密があるそうです。
ガラス製品を作る際に、微量な金属を加えることで二色性ガラスというものができます。

「Lycurgus Cup」には、ものすごく細かな金と銀の粉が、一定の割合で溶け込んでいるそうです。
ワインを飲むためのカップとして作られたので、テーマにはギリシアのディオニッソス(ローマのバッカス)が選ばれました。
でも蔓に絡まれているのは、ディオニッソスじゃない。
彼のことが嫌いだった、リコルガスという王様。
あるとき、ディオニソスが彼の国に来ているとうわさを聞きます。
ディオニソスはワインの神様で、人々の正気を失わせたり、悪い行いをさせたりするので、リコルガスは悪い神様だと思ったのです。
早速、追い出そうと考えた王様は、ぶどうの蔓を切ってワインを造れなくしてしまいます。
これに怒ったディオニソスは、リコルガスの正気を失わせて、彼の家族を殺すように仕向けたり、その罪として彼の国民らによって、荒れ野へ追放したりしています。

そんな柄が入っているから、出されたワインは断らずに飲み切ってしまわないと、罰が下りそうな恐ろしいカップです(笑)
でも飲みすぎると正気を失うかも…。

お酒は楽しむ程度にほどほどにってことでしょうか?
是非いろいろ考えながらご覧になるといいと思います。




次回の更新は5月25日です!

イギリスの政府公認観光ブルーバッジガイドについては私のウェブサイトをご覧ください(リンクします)

2026年5月11日月曜日

英国国教会ができたわけ



「イギリスの王座に就いた人を挙げなさい」って聞かれたら、皆さんは何人名前を挙げることができますか?

多分エリザベス女王とヴィクトリア女王、そしてヘンリー8世あたりが上位を占めそう。
もしかしたらウイリアム征服王も入るかも。

私の知っているイギリス人は、けっこう歴史に詳しい人が多いんだけど、それでもウイリアム征服王から現在のチャールズ3世に至るまで、ちゃんと順番通りに言える人を今まで見たことがありません(もちろんガイドのお友達は別)
それはイギリスの教育が良くないせいって文句もよく聞きます。

順番で覚えるより特徴のある人が覚えやすいですよね。

この窓はハンプトンコート宮殿のグレートホールにあるもの。

中央に立っているのはイギリスで一番有名な王様のひとり、ヘンリー8世。
イギリスの小学校で、必ず勉強する王様です。

英国国教会を作った王様。
そして、6人のお妃さまがいた王様。
一度に、じゃないですよ。
次から次に、です(笑)

ヘンリーの両脇には左に3つ、右にも3つ、王冠の付いた紋章。
これらは彼のお妃たちの紋章です。

左から、結婚した順に並んでいます。
一番初めはスペインのお姫様、キャサリン・オブ・アラゴン。
20年以上も一緒にいました。
家柄もばっちり。
当時ヨーロッパで一番の権力を誇っていた、ハプスブルグ家のカール5世の親戚です。

でもこの二人の間で、ちゃんと育った子供は女の子ひとり。
のちのメアリ1世です。
なので、男の子が欲しいヘンリーは悩みます。

実はヘンリーは皇太子ではなかったのです。

お兄さんにアーサーという人がいました。
アーサーが王様になって、ヘンリーは教会の世界に入るというのが、お父さんヘンリー7世のプラン。
キャサリンはそのアーサーのために選ばれた花嫁だったのです。
ところが結婚後半年もたたずにアーサーが亡くなってしまいました。
彼女はそのまま次男であるヘンリーと結婚したわけ。

結婚した時は、6歳年上で面倒見のいい姉さん女房。
それがどんどん色あせて見え始め、浮気もいろいろしてみます。
死産があったり流産が続いたりしたうちは、まだ僅かな望みもあったものの、
そのうち諦めをつけないといけない年齢になりました。

「キャサリンと別れた方がいいのかなぁ…」

気に入った王妃の侍女アンからは
「結婚してくれないなら、お付き合いできません」と言い切らたことも、そう思い始めた原因の一つ。
とうとうヘンリーはローマ法王にキャサリンとの結婚の無効を申し出ます。

理由は兄嫁だったから。
聖書の中に、兄弟の嫁と結婚するなと書かれているらしい。

この当時のローマ法王はメディチ家のクレメンス7世。
彼は度重なるヘタな政治でカール5世を怒らせてしまい、
カール5世の捕虜のような生活をしていました。

なので、カール5世の親戚であるキャサリンに不利な決定などできるわけがなかったんですよね。
そうじゃなければ、お金のために何でもやったルネッサンスの法王のひとりだから、何とかなったと思います。

埒が明かないと思ったヘンリーはカソリックからの離脱を決意。
英国国教会を設立します。

そして、国王至上法(ローマ法王よりも自分が偉いという法律)を元に、キャサリンとの結婚を無効にしてしまいます。

キャサリンは英国の元王妃という肩書は受け取れず、
英国の元皇太子妃(皇太子アーサーの未亡人)という肩書で満足しなくてはいけませんでした。


ハンプトンコート宮殿のチャペルロイヤルへの入り口近くには、とても面白い絵がかかっています。
鮮やかな色がないので、目立ちません。

こういった白黒の絵は彫刻を思い起こさせるように描かれました。
ところどころに金が使われています。
4人の男性が、いい身なりのお爺さんに石を投げつけています。

4人は聖書を書いた福音書記者。
左からヨハネ、マタイ、ルカ、そしてマルコです。
それぞれが持っている石に名前が書かれていて簡単!(笑)

身なりのいいお爺さんは、その帽子からローマ法王だと分かります。
彼の両隣には女性がいて、それぞれに強欲と偽善と書かれています。


絵の左上にはエルサレムの町に新しい明りが灯されて、それはキリスト教の新しい時代の到来を表しているのです。

描いたのはジロラモ・ダ・トレビーゾ。
ヘンリ8世につかえていた画家のひとり。
英国国教会設立後、カソリック批判を広めるために描かれたのでしょう。
ヘンリーはこんな絵を毎日眺めて自己満足に浸っていたのかもしれません。


次回の更新は5月18日です!

イギリスの政府公認観光ブルーバッジガイドについては私のウェブサイトをご覧ください(リンクします)

2026年5月4日月曜日

5月のイギリスは楽しい!


5月に入りました。
英語で5月のことを May といいます。
May はラテン語では Maius、これはインド・ヨーロッパ祖語の語根 MAG(成長する)に由来するそうです。
というのも5月は北半球では春で植物の成長期ですからね。
同じ語源から派生した言葉に、ラテン語の Maiores「長老たち」または「偉大な者たち」というのもあります。
英語の Mayor(市長)とか Majority(大多数)なんかも同じ語源。

他にもマグマ、マハラジャ、マックスなど、大きくて M から始まる言葉は同じ語源であるものが多いです。

イギリスでは5月は春本番といった季節。
昔はいろんな村や町でメイポールという高い棒を建てて、その周りを踊るお祭りがありました。
ロンドンにあるメイフェアという地区名はそのお祭りの名残。
お祭りがあった場所はシェパーズマーケットのエリアです。
足元に鈴をつけて踊るモリスダンシングなどもこういった村祭りの目玉。

このいい季節に長い週末が楽しめるように、イギリスでは5月の最初と最後の月曜日が祭日になります。
粋な計らいですね!

地方でのイベントも多くて、イギリスらしさを感じることができます。
  • クーパーズヒルのチーズを追いかけるお祭り
  • チェルシーのフラワーショー
  • スペイサイドのウイスキー祭り
  • ウェンブリースタジアムでFAカップのファイナル
ここに挙げたのはほんの一例。
是非調べてお出かけください。