2026年5月18日月曜日

大英博物館にある魔法の酒杯



この酒杯、ローマで作られたものなのに、なぜか大英博物館の中でも辺鄙なアングロサクソンの部屋に置いてあります。
名前は 「Lycurgus Cup」
この部屋の一つ手前(ルーム40)にはハリーポッターに出てくるチェスのモデルになったルイス島のチェスセットが展示してあります。
ハリーポッターのお話の中に、炎のゴブレットって出てきますよね。
火は出てこないけれど「Lycurgus Cup」は光を当てると、浅い緑色の本体が真っ赤に変わる不思議な酒杯なのです。

読むよりもこの写真を見るのが早い。
これ、携帯のカメラなので、肉眼だともっときれいです。

いかがですか?
展示ケースの光が変化するだけでこんなになるんです。

男の人がぶどうの蔓に絡まれて、それをなぎ倒そうと、もがいているような模様です。
この部分はガラス製。
そしてカップの縁や足元は金をかぶせた銀でできています。

どうして色が変わるのかは、ガラスに秘密があるそうです。
ガラス製品を作る際に、微量な金属を加えることで二色性ガラスというものができます。

「Lycurgus Cup」には、ものすごく細かな金と銀の粉が、一定の割合で溶け込んでいるそうです。
ワインを飲むためのカップとして作られたので、テーマにはギリシアのディオニッソス(ローマのバッカス)が選ばれました。
でも蔓に絡まれているのは、ディオニッソスじゃない。
彼のことが嫌いだった、リコルガスという王様。
あるとき、ディオニソスが彼の国に来ているとうわさを聞きます。
ディオニソスはワインの神様で、人々の正気を失わせたり、悪い行いをさせたりするので、リコルガスは悪い神様だと思ったのです。
早速、追い出そうと考えた王様は、ぶどうの蔓を切ってワインを造れなくしてしまいます。
これに怒ったディオニソスは、リコルガスの正気を失わせて、彼の家族を殺すように仕向けたり、その罪として彼の国民らによって、荒れ野へ追放したりしています。

そんな柄が入っているから、出されたワインは断らずに飲み切ってしまわないと、罰が下りそうな恐ろしいカップです(笑)
でも飲みすぎると正気を失うかも…。

お酒は楽しむ程度にほどほどにってことでしょうか?
是非いろいろ考えながらご覧になるといいと思います。




次回の更新は5月25日です!

イギリスの政府公認観光ブルーバッジガイドについては私のウェブサイトをご覧ください(リンクします)

2026年5月11日月曜日

英国国教会ができたわけ



「イギリスの王座に就いた人を挙げなさい」って聞かれたら、皆さんは何人名前を挙げることができますか?

多分エリザベス女王とヴィクトリア女王、そしてヘンリー8世あたりが上位を占めそう。
もしかしたらウイリアム征服王も入るかも。

私の知っているイギリス人は、けっこう歴史に詳しい人が多いんだけど、それでもウイリアム征服王から現在のチャールズ3世に至るまで、ちゃんと順番通りに言える人を今まで見たことがありません(もちろんガイドのお友達は別)
それはイギリスの教育が良くないせいって文句もよく聞きます。

順番で覚えるより特徴のある人が覚えやすいですよね。

この窓はハンプトンコート宮殿のグレートホールにあるもの。

中央に立っているのはイギリスで一番有名な王様のひとり、ヘンリー8世。
イギリスの小学校で、必ず勉強する王様です。

英国国教会を作った王様。
そして、6人のお妃さまがいた王様。
一度に、じゃないですよ。
次から次に、です(笑)

ヘンリーの両脇には左に3つ、右にも3つ、王冠の付いた紋章。
これらは彼のお妃たちの紋章です。

左から、結婚した順に並んでいます。
一番初めはスペインのお姫様、キャサリン・オブ・アラゴン。
20年以上も一緒にいました。
家柄もばっちり。
当時ヨーロッパで一番の権力を誇っていた、ハプスブルグ家のカール5世の親戚です。

でもこの二人の間で、ちゃんと育った子供は女の子ひとり。
のちのメアリ1世です。
なので、男の子が欲しいヘンリーは悩みます。

実はヘンリーは皇太子ではなかったのです。

お兄さんにアーサーという人がいました。
アーサーが王様になって、ヘンリーは教会の世界に入るというのが、お父さんヘンリー7世のプラン。
キャサリンはそのアーサーのために選ばれた花嫁だったのです。
ところが結婚後半年もたたずにアーサーが亡くなってしまいました。
彼女はそのまま次男であるヘンリーと結婚したわけ。

結婚した時は、6歳年上で面倒見のいい姉さん女房。
それがどんどん色あせて見え始め、浮気もいろいろしてみます。
死産があったり流産が続いたりしたうちは、まだ僅かな望みもあったものの、
そのうち諦めをつけないといけない年齢になりました。

「キャサリンと別れた方がいいのかなぁ…」

気に入った王妃の侍女アンからは
「結婚してくれないなら、お付き合いできません」と言い切らたことも、そう思い始めた原因の一つ。
とうとうヘンリーはローマ法王にキャサリンとの結婚の無効を申し出ます。

理由は兄嫁だったから。
聖書の中に、兄弟の嫁と結婚するなと書かれているらしい。

この当時のローマ法王はメディチ家のクレメンス7世。
彼は度重なるヘタな政治でカール5世を怒らせてしまい、
カール5世の捕虜のような生活をしていました。

なので、カール5世の親戚であるキャサリンに不利な決定などできるわけがなかったんですよね。
そうじゃなければ、お金のために何でもやったルネッサンスの法王のひとりだから、何とかなったと思います。

埒が明かないと思ったヘンリーはカソリックからの離脱を決意。
英国国教会を設立します。

そして、国王至上法(ローマ法王よりも自分が偉いという法律)を元に、キャサリンとの結婚を無効にしてしまいます。

キャサリンは英国の元王妃という肩書は受け取れず、
英国の元皇太子妃(皇太子アーサーの未亡人)という肩書で満足しなくてはいけませんでした。


ハンプトンコート宮殿のチャペルロイヤルへの入り口近くには、とても面白い絵がかかっています。
鮮やかな色がないので、目立ちません。

こういった白黒の絵は彫刻を思い起こさせるように描かれました。
ところどころに金が使われています。
4人の男性が、いい身なりのお爺さんに石を投げつけています。

4人は聖書を書いた福音書記者。
左からヨハネ、マタイ、ルカ、そしてマルコです。
それぞれが持っている石に名前が書かれていて簡単!(笑)

身なりのいいお爺さんは、その帽子からローマ法王だと分かります。
彼の両隣には女性がいて、それぞれに強欲と偽善と書かれています。


絵の左上にはエルサレムの町に新しい明りが灯されて、それはキリスト教の新しい時代の到来を表しているのです。

描いたのはジロラモ・ダ・トレビーゾ。
ヘンリ8世につかえていた画家のひとり。
英国国教会設立後、カソリック批判を広めるために描かれたのでしょう。
ヘンリーはこんな絵を毎日眺めて自己満足に浸っていたのかもしれません。


次回の更新は5月18日です!

イギリスの政府公認観光ブルーバッジガイドについては私のウェブサイトをご覧ください(リンクします)

2026年5月4日月曜日

5月のイギリスは楽しい!


5月に入りました。
英語で5月のことを May といいます。
May はラテン語では Maius、これはインド・ヨーロッパ祖語の語根 MAG(成長する)に由来するそうです。
というのも5月は北半球では春で植物の成長期ですからね。
同じ語源から派生した言葉に、ラテン語の Maiores「長老たち」または「偉大な者たち」というのもあります。
英語の Mayor(市長)とか Majority(大多数)なんかも同じ語源。

他にもマグマ、マハラジャ、マックスなど、大きくて M から始まる言葉は同じ語源であるものが多いです。

イギリスでは5月は春本番といった季節。
昔はいろんな村や町でメイポールという高い棒を建てて、その周りを踊るお祭りがありました。
ロンドンにあるメイフェアという地区名はそのお祭りの名残。
お祭りがあった場所はシェパーズマーケットのエリアです。
足元に鈴をつけて踊るモリスダンシングなどもこういった村祭りの目玉。

このいい季節に長い週末が楽しめるように、イギリスでは5月の最初と最後の月曜日が祭日になります。
粋な計らいですね!

地方でのイベントも多くて、イギリスらしさを感じることができます。
  • クーパーズヒルのチーズを追いかけるお祭り
  • チェルシーのフラワーショー
  • スペイサイドのウイスキー祭り
  • ウェンブリースタジアムでFAカップのファイナル
ここに挙げたのはほんの一例。
是非調べてお出かけください。

2026年4月27日月曜日

イギリスらしい言葉のクイズ


今日はイギリス英語のクイズを楽しんでみましょう!
以下の言葉の意味を答えてください。


A1、Hoover
A2、Till
A3、Loo
A4、Brolly
A5、Spark

B1、A piece of cake
B2、Bob's your uncle
B3、Full Monty
B4、Not my cup of tea
B5、Bee's knees

C1、HMRC
C2、TBF
C3、BYO
C4、X
C5、UNI


それでは答です。


A1、掃除機
A 2、レジ
A 3、トイレ
A4、
A5、電気技師

B1、とても簡単
B2、大丈夫、問題ない
B3、選択できるもの全て
B4、私の好みじゃない
B5、珍しく、かつ貴重なもの

C1、税務署
C 2、正直なところ
C3、(レストランなどで)持ち込み可能
C4、キス(挨拶)
C5、大学


クイズの結果

15問、全て正解だった人=あなたはイギリス英語の達人です!
イギリスで英語での会話も問題なくこなしているでしょう。
英語の言い回しをネタに、ブログを書いてみるのもおすすめ(笑)
B2 のボブおじさんのことはパブの肴に書いてみました(リンクします)
よかったら読んでみてください。

間違いがあった人→間違いの多かったジャンルはA,B,Cのどれでしたか?
Aの質問はイギリスで慣用で使われている名詞を集めました。
Bの質問は会話に登場する言葉。
Cは書いたものを見る場合が多い略語。

AやBはどうしてそんな意味になったかなどいわれを調べると興味深いです。
Cはネットやテキストなどでコツコツ覚えていくしかないです。


2026年4月20日月曜日

4月23日からが旬なイギリスの食べ物って?

皆さん、イギリスのアスパラガスの旬はご存知ですか?

セントジョージの日からミッドサマーデー(夏至)まで。
つまり4月23日から6月21日ってことです。
短いですよね。

スーパーマーケットでは年中手に入りますが、旬でなければほとんどが外国産。
旬の時期でも安いものは外国産の場合があります。

鮮度が落ちるのが早くて、グルメな人は摘み取ってから2時間以内に食べないと本当の味じゃないなんて言ったりします。
摘んで2時間というのはかなりハードルが高いですが、そこまで気にしなくても大丈夫。
この季節、レストランのメニューに「イギリスのアスパラガス」と書いてあったら是非注文してみてください。

私はアスパラガスが好きなので、毎年セントジョージの日を楽しみにしています。
旬のインパクトがあるベジタリアン(ホランデールソースに卵やバターが入るからヴィーガンじゃないけど)メニュー。
蒸してホランデールソースでいただくのが定番。
ポーチした卵と合わせてもおいしい。

他にもこの時期に旬なのが新じゃがの一種「ジャージー・ロイヤル」です。
ジャージーというのはイギリスの離島のひとつ。
その南に傾斜した土地で採れる新じゃががとても美味しいのがこの季節。
これもイギリス料理のお店で楽しむことができます。
こちらは茹でてバターを絡めるととても美味しい。
同じく旬のレモンソールやプレイスといった淡泊な白身のお魚と合わせると美味しいです。

2026年4月13日月曜日

適材適所


イギリス人とおしゃべりしていると英語の面白いことわざを聞くことがあります。

往々にして、ことわざに出てくる単語はほ日常の何気ない言葉。

それなのに、英語のことわざって日本語に訳しても何のことかわかりづらい場合があります。
習慣や物の名前って文化圏によって変わってしまうから、言葉の訳だけでは少し違和感が残るものも多いです。

でも万国共通、日本語でも簡単に想像してもらえることわざもあります。

そんなひとつが「Square peg in a round hole(丸い穴に四角いペッグ)」というもの。
つまり形が違うから穴に合わない。
あるポジションで働いていた人がその職場に合わなかった、みたいな会話に出てきます。
「He was a square peg in a round hole(彼はあそこに合っていなかったよね)」

スクウェアは日本では正方形と訳されています。
イギリスでももちろん正方形なんだけど、普通にスクウェアという時はただの四角という意味以外に「融通が利かない」とか「型にはまって柔軟ではない」といった意味もある。
ということで Square peg というのは四角いペッグということなんだけど、ペッグというのは
普通は洗濯ばさみのことでもあるし、木の小さな杭のこともそうよびます。
日本語では「木タボ」というそうですね。
簡易家具の組み立てなどで穴に差し込む小さな木の杭。
もしくはゲームボードの得点や位置を示すための小さなピースもペッグです。


こういったペッグが四角かったら丸い穴には入りませんよね?
もちろん小さな四角なら入るけれど、スカスカで役立たない。

ということで「Square peg in a round hole(丸い穴に四角いペッグ)」は「適材適所ではない」という意味になるわけです。

面白いのは「適材適所」という日本の言葉も、元は木造建築で正しい場所に適した素材を使うという意味なんですね。

日本では新学期や就職で新しい環境に変わる人も多い4月。
イギリスでは前回のブログでお伝えしたような、税制の年度では大事な月ですが、学校の新学年は9月からという場合がほとんどなので、4月は日本ほど特別な月ではありません。

学校や職場が自分の考えた通りかどうかは、いくら事前に調べていても、入ってみるまで分からないということも多いと思います。

自分が四角い杭だと思ったら、自分に合う四角い穴を探しましょう!
世の中の穴の全てが丸いわけではありません。
適材には必ず適所があるものだと思います。

逆のことわざもあります。
「There’s a lid for every pot (どんな容れ物にもそれに合う蓋がある)」
↑これは場所よりも人間関係でよく使われます。

There’s a niche for everyone(誰にでも適所がある)
↑職場とかならこちらの方がいいかも。

Life is too short to be in the wrong job(合わない仕事をする時間は短い人生にはない)
↑そしてこれが結論、自分の人生を無駄にしちゃダメ。

2026年4月6日月曜日

イギリスの中途半端な税金年度


今日はイギリスの税金年度のおはなし。

イギリスの税金年度、4月6日から4月5日までなんです。

何て半端な日付だといつも思っていました。

別に忙しい12月31日に終わりにしなくてもいいけど、春がいいなら3月31日とか、もっとキリのいいタイミングにすればいいのにって思いませんか?


いったいどうして4月5日になったんだろう?

そう思って調べてみました。


現在私たちが使っているカレンダーはグレゴリオ暦という昔のローマの暦。

16世紀の後半に考案されました。

このグレゴリオ暦はカソリック世界にすぐ浸透したのですが、イギリスはその当時カソリックから独立して英国国教会をつくったチューダー時代。

なので、新しい暦を無視して古いユリウス暦を使い続けました。


ところが古い暦と新しい暦は既にスタートの時点で10日の開きがありました。

そして、イギリスがようやく重い腰を上げてグレゴリオ暦を導入することになった1752年には、さらに1日の誤差が追加されていました。


この11日間をどう処理するか…。

政治の腕の見せ所。


もともとイギリスでは1年を4つに分けて会計処理がされていました。

今でも月極ではなく、クォーターがよく使われます。

地代とか光熱費なんかもそう。


その1年の始まりはキリスト教にとって一番大切な日のひとつ。

クリスマスじゃないですよ。

イースターでもありません。

イースターはその年で変動するので年の始めには不向きです。


じゃあいつかといえば…3月25日です(キッパリ)

…は?

「何の日?」ってカンジですよね。



3月25日は大天使ガブリエルがマリア様に受胎を告知した日です。

つまりキリストは神様の子供ってこと。

そこで1752年に9月を11日間減らして帳尻を合わせました。

なぜ9月かっていうのは3月から始まる年の真ん中だからでしょうね。

これは私の想像ですが、年の始めや終わりには無くなった感が強いから、真ん中から取ったってことだと思います。


ところが「11日減ったのに、税金はそのままか」という問題が起こります。

国の出納係からすれば、ややこしい計算をするよりももっと簡単な方法が魅力的。


単純に本来なら3月25日に始まって3月24日に終わるはずの1年から11日減らされたので、帳尻合わせのために11日後の翌年4月4日を年度末にしました。

これで1年の長さは変わらず税金もそのまま、ただ年度の日付が変わっただけになりました。


ところが! 1800年のうるう年のためさらに1日が加わります。

そこで税金年度が4月6日開始で4月5日までに定着したというわけです。

なんにでも歴史があるイギリスですね(笑)


因みに日本の学校や会計の年度が4月1日始まりなのは、一説によると、会計制度の始まった明治時代にイギリスの影響を受けたというものがあります。

さすがに半端な日付までは真似しなかったようです。

偉い、ニッポン(笑)


次回の更新は4月13日です!

イギリスの政府公認観光ブルーバッジガイドについては私のウェブサイトをご覧ください(リンクします)